日本の言語政策と日常の言葉の鎖国、グローバル化

公開日:  最終更新日:2018/05/12

アジアが欧米の植民地になっていた時代では、日本語は独立国家の日本の象徴でもありました。国語を守ることは国を守ることですが、どこか軍国主義に通じるものがあり、現在でも日本語は神聖化しているような気配すらあります。

もちろん日本語を維持することは日本人としての誇りであり、日本の文化、民族としても大変重要です。

グローバルな言語政策と言葉の鎖国

しかし、多言語化/マルチリンガル化はグローバルな現代において世界で重視され、EUやアメリカでは政策的に推進されています。日本はそんな現代においても、実質的に日本語のみの「言葉の鎖国状態」にあります。

街で聞こえてくる言葉のほとんどは日本語で、会社も日本語、普段のテレビでもほとんどが日本語で、外国語の番組やインタビューがあっても日本語吹き替えや二重音声になっています。

そして、日本人の英語の習得率は一般に1%や2%と言われています。

参照 2016年の高校生の調査
驚愕の日本の英語力調査結果

言葉の開国、外国語習得のメリット

〈個人レベル〉

個人レベルでみても、英語ができれば英語のニュースに簡単にアクセスできますし、受験や仕事にもプラスになります。その効果は年収が上がるにつれ顕著になるでしょう。

もちろん英語だけでなく、中国語、スペイン語など世界で必要とされる言語も同様です。

〈日本経済レベル〉

また、日本経済レベルでみても、グローバルな言語政策は日本の成長のプラスになります。

少子高齢化の日本市場は縮小傾向ですが、世界市場は成長を続けています。英語などの多言語を使って、世界を相手にできる人材の育成は今後の日本の成長に必要不可欠です。

日本は言葉の開国が必要

これらの事情から、日本でも本格的に言語政策を考え、開国する時なのではないかと推測しています。

単に学校での英語の勉強目標を上げるだけでなく、実際に一定比率のテレビ番組を日本語字幕と英語音声にするなど、日常生活を多言語化していくような本質的な開国の具体策が必要でしょう。

《アメリカやヨーロッパの言語政策とテレビ》

<ヨーロッパの例>

ヨーロッパのEUは多言語の共同体という特徴から言語政策は重要事項です。具体的には二か国語以上のEUの公用語の習得が目標とされています。

イギリス以外の国でも英語番組が「英語音声のまま」字幕付きで放映されています。吹き替えより字幕で観る人の多い国は外国語習得率が高くなっています。

<アメリカの例>

また、移民が中心のアメリカに国語はありませんが、英語とスペイン語が実質的な国語になっています。

最近では多言語主義が進んでいるため、英語を強制するわけではありません。しかし、教育言語は英語が主なため、スペイン語家庭は英語学習のために「家族で英語の子ども番組」を見ることも多いです。

多言語化で果たすテレビの役割

「テレビが外国語音声で観れる」環境、これが日常の多言語化に繋がり、人や国の多言語化に効果を出しているようです。

テレビだからダメ、テレビは勉強ではないから身につかないというイメージは欧米にはない日本独特の感覚かもしれません。

テレビで語学を学ぶ方法の歴史

テレビを語学学習の基礎にするという考え方は、1969年のアメリカの政策によるセサミストリートが最初です。


画像出典:セサミストリート公式サイト

元は英語が母語でない移民の子どもの英語対策のために始まりました。それからさまざまな番組が生まれ、約50年の歴史があります。

言葉の学習の氷水理論

筆者はこの「英語の勉強」以前に「英語のテレビをたくさん観ておく」という欧米流の方法から、言葉の学習の氷水の理論を提唱しています。

これは、文字を氷、音を水に例えた、「言葉の習得には文字の学習の前に、十分な音のストックが必要」という考え方です。

母語、外国語を問わず言語の習得には、音のストックが重要な役割を果たしているという仮説になります。

英語のテレビと時間数、テレビの鎖国

英語音声でテレビを観るのはとても簡単ですが、1,000や2,000という結構な時間数が目安です。

この時間数は「日常的に観ることが前提の数字」で本来は海外のようにテレビ放映があるのが理想です。

しかし、今の日本の地上波のテレビは鎖国状態で英語音声の放映はほとんどないので、子ども英語をする人や海外ドラマを観る人はケーブルテレビやBS、YouTube、DVDなどで観ています。

通常のテレビ放映ではないので、限られた人が実践しているのみになります。

言語のグローバル化の弊害

教育言語と英語だけできるバカ

もちろん、語学力は学力がきちんとあることが前提です。バイリンガル志向が強すぎて教育言語である日本語をないがしろにした結果、学力が落ちるリスクには十分配慮が必要です。

いわゆる「英語だけできるバカ」(セミリンガル)になってしまうなら、語学力は弱くても学力があるほうがマシになってしまいます。

国語の保護と少数言語の保護

また、社会的にみても英語が主になり過ぎて、日本語が使われなくなっていってしまうのは国語の保護、文化の保護の面からマイナスです。

言語政策も子ども英語も、バイリンガル、マルチリンガル化と「母語、教育言語重視、少数言語の保護」はセットで考えることが重要です。

言葉の鎖国からの開国とテレビ英語

言葉のグローバル化にはマイナス面もありますが、それでも先述のように日本は言語の開国を進める必要性があります。

日本の人口が増加傾向だった昔は国内市場の経済成長が望めましたが、現在の日本は少子高齢化で内需の成長は見込めません。経済的に世界市場にさらに進出する必要があるのです。

テレビから始まる言葉のグローバル化

テレビのグローバル化は短期的には視聴率は望めず、批判も相当数予想されることから、テレビ局だけでは推進しにくいものです。このため、アメリカのセサミストリートのようにテレビ局と行政が一体となって行うことになります。

日本でもテレビで英語音声の番組やインタビューが流れ、日常の言葉がグローバル化していくことで、日本の言葉の開国が進むことでしょう。

そして、これに合わせて、政府は母語や教育言語重視、少数言語の保護の政策もしっかり進める必要があります。

政策的なグローバル化と外国語が流れる日常

本質的な言葉のグローバル化は、個人の幼児期の英語漬けや、学校の英語の授業数を増やすだけの指針とは異なります。

テレビを通じて、「外国語音声を聞く日常」が日本でも広まり、実質的な言葉の開国が進むことによって、本当の言葉のグローバル化に繋っていきます。

子どもたちの未来のために

実際、日本語の字幕付きであっても「テレビから外国語が流れる」ことに抵抗がある人も多いかもしれません。

しかし、この先の日本は日本語だけでいい時代ではなくなってきています。大人のためではなく、子どもたちの将来、そして日本のために、テレビという身近なところから、言葉もグローバル化していく必要性があるのです。

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