日本人が知らない欧米人の英語習得率が高い理由

公開日:  最終更新日:2018/03/08

子ども英語の先進国,アメリカ、イギリス

アメリカやヨーロッパで、母語が英語でない人たちはどのように英語を習得しているのでしょうか。

陸続きで外国が身近な国では、外国語の習得は仕事に直結することが多く、外国語の学習の文化は日本よりずっと進んでいます。特に古くから移民が多いアメリカやイギリスは移民の子どもたちの英語習得は社会的に重要とされてきました。このため、これらの国は子ども英語の先進国になっています。

欧米での英語習得率が高いのは学校教育や勉強だけが理由ではありません。アメリカやヨーロッパでの英語は、学校ではなくテレビから始まっています。

今回は日本人が知らない、欧米のテレビと英語の深い関係を各種調査からみていきたいと思います。

【アメリカのセサミストリートと子どもの英語】

アメリカはほぼ移民の国なので、英語が母語でない移民が学校で英語の学習ができ、就職、生活できるようにするために、移民の英語教育が政策的に必要でした。

そこで1969年、移民の子ども英語教育のために政府が関与してできたのがセサミストリートです。これは高い人気を得て社会的ヒットになり、その学力への貢献は高く評価されました。

1996年の調査だとアメリカの未就学児は3歳までに95%がセサミストリートを観ており、2012年にはアメリカ人の88%はセサミストリートを観たことがあるという調査が出ています。

20170919-162808.jpg
Public Television Survey: Just Over Half Support Government Funding
2012


“G” is for Growing: Thirty Years of Research on Children and Sesame Street

移民の子ども英語へのテレビの貢献

幼児教育テレビ番組のセサミストリートは当初の狙い通り、特に移民層(外国人)の子どもの英語に効果があったと言われ、スペイン語などの母語が違う移民の子どもの就学前の英語の基礎に貢献しました。

2001年の調査でもスペイン語家庭では子ども向け教育番組を長めに観る傾向にあり、英語学習に家族でセサミストリートを観るという意見が多いようです。

教育テレビ番組と幼児全体の学力向上

またセサミストリートは移民だけでなく子ども全体の学力に貢献したと言われています。当初は移民の英語教育が目的でもありましたが、高い視聴率のもと、就学前の幼児期の言葉だけでなく、学力向上、さらに社会的な教育まで取り組むようになったためです。

アメリカにおける英語、スペイン語の今後の動き

ただ、今はアメリカでは英語を強制しない多言語化の動きもあり、ヒスパニック系の高い出生率もあって、スペイン語も以前よりずっとメジャー化してきています。人口構成の変化から、今後はスペイン語人口がさらに大きな影響力を持ってくると言われています。

children’s learning from television 2005 Television 18/2005

The Relations of Early Television Viewing to School Readiness and Vocabulary of Children from Low-Income Families: The Early Window Project

セサミストリートは凄いんです!

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《テレビ批判と絵本への回帰》

セサミストリートの成功ののち、世界に似たような子ども教育テレビ番組がたくさんできて、子ども向けアニメも増えてきました。すると今度はテレビに偏重し過ぎたために社会問題が出てきました。低年齢の子どもがテレビを長時間みることの弊害や、過激な番組が問題になったりもしています。

これを受け、1990年代から絵本に回帰する動きが出てきました。テレビ称賛からの行き過ぎが批判に繋がったわけです。

 

《2歳未満の子どもとテレビ》

この時期、小さな子供の研究も進んできて、1999年にはアメリカ小児科学会では2歳未満の子どもにはテレビ視聴のゼロを推奨しています。また、日本の小児科学会でも2歳未満の子供の4時間超のテレビ環境は言葉の遅れなどが指摘されていて、長時間の視聴は控え2時間を目安とすることなどが提言されています。

アメリカのゼロ推奨は現実と乖離していると思いますが、テレビは子どもに悪いという印象を持っている方が多いのはこの小さな子の調査などの流れのためでしょう。

2歳未満のテレビなどについて詳しくはこちらにまとめています。

小さなうちからテレビを見せていいの?

《幼児期のテレビの評価は高い》

しかし、英語版のセサミストリートの数々の受賞や研究、評判を見ればわかるように特に幼児期のその教育的な効果は大きいと言われています。

40年以上も長く続き、世界中に番組を輸出しているので、テレビに幼児への教育効果があるのは間違いないでしょう。幼児期にセサミストリートなどの子ども番組を観ていた子どものその後の学力や素行はいいという調査もあります。

英語が母語でない外国出身の幼児の英語にセサミストリートが効果があった点をみれば、英語のテレビ番組が日本の子どもの英語習得に効果があるのは容易に予想できます。

children’s learning from television 2005 Television 18/2005
The Thoughtful Animal Sesame Street and Child Development

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《ヨーロッパでの言語とテレビ事情》

一方ヨーロッパのテレビと言語の事情はどうでしょう。

西ヨーロッパ諸国はヨーロッパ連合(EU)を作っておりEUの人口は約5億人(日本比4倍)、名目GDP約16兆USドル(同4倍)と経済規模はアメリカ18兆に次ぐ一大連合になっています。(2016年)赤がアメリカ、緑がヨーロッパ、オレンジがアジア、中心近くに日本。

20170908-225556.jpgヨーロッパと日本の面接比較
the global economy by GDP how much.net
2015年ベース 外務省 欧州連合(EU)
GDPは?成長率は?EU経済の過去と現在
the true size.com

 

《EUの言語教育政策》

EUには様々な言語があり、英語だけではなくドイツ語、フランス語なども話されています。2006年の調査によると母語かどうかは問わず、半数は英語で話しています。

EUは母語が違う人の集まりゆえ、言語の多様性、社会的結束、相互理解などのために言語教育政策はEUの重要な政策となっています。具体的には、母語以外に2ヶ国語以上話せるようにすることが目標です。

EU英語人口比率

EU 欧州委員会のユーロバロメーター2006
Special Eurobarometer 243 EUROPEANS AND THEIR LANGUAGES 2006
EU 欧州委員会のユーロバロメーター2012
Special Eurobarometer 386 EUROPEANS AND THEIR LANGUAGES 2012

 

《EUの言語教育とテレビ》

このEUの語学調査は子供に限っていませんが、ヨーロッパではテレビと外国語習得は深い関係にあると考えられており、EU、政府がどんな言語教育政策をすべきかなどが議論されたりしています。

それを受け、EU諸国は国を跨いだ大規模な調査があり、最近の国別のテレビ視聴と語学力の様子がわかります。子どもだけではなく全年代への調査ですが、字幕付きでテレビを見るかどうかの調査で、吹き替えされているとテレビで外国語が学べないので、字幕で見るかどうかが調査項目になっているのです。

EU字幕付きを好む比率

Special Eurobarometer 386 EUROPEANS AND THEIR LANGUAGES 2012

 

《小国の外国語学習の事情》

小国のマイナー言語は吹き替えを作る予算が少ないので字幕でテレビを観る機会が増え、テレビと学校で外国語を覚えていき、仕事も小国ゆえ他国相手が増えるなどの理由で数カ国語を話す人が増えてきます。

フィンランド、スウェーデン、デンマーク、オランダなどは英語習得率も字幕率も高いそんな国です。

フィンランドの語学力が高い理由について日本語で書いている方がおられました。語学の学校教育もしっかりしていますが、小さな頃からテレビを英語などで観ているため、数カ国語に堪能になっていくそうです。

Huff post フィンランド人は、どうして英語が上手なの? その理由を調べてみた

 

《メジャーな国の外国語学習の事情》

一方、メジャーなフランス、イタリア、ドイツ、スペイン、ポーランドはマイナー言語の国々とは少し事情が異なります。

ヨーロッパでも大きな国だと主に1民族1言語で教育も仕事も自国で賄える面が出てきて、普段英語がいらない環境などは日本に近くなります。(もちろん、それでも日本よりずっと多様性に富んでいます。)

このような国々の外国語の基礎はやはりテレビが元だと言われているようで、英語習得率が20%台とEU平均を押し下げているスペインは吹き替え文化が強く、字幕率が低いため英語が苦手なのだという意見も見られます。

WHY DO SOME EUROPEAN COUNTRIES SPEAK ENGLISH BETTER THAN OTHERS?

 

《テレビの字幕率と英語、語学習得率の相関関係》

それを端的に示すのがテレビの字幕を好む率と英語習得率が相関関係です(グラフの赤と青の線)。ドイツを除いて、吹き替えを好まない国は外国語の習得率が高くなっています。

普段から字幕で英語などのテレビ番組をみているため自然と英語の素地ができていて、さらに学校で英語を学ぶことで習得率が高くなるのが容易に想像できます。

 

EU英語人口比率と字幕比率、外国語習得比率

Special Eurobarometer 386 EUROPEANS AND THEIR LANGUAGES 2012

※ドイツは字幕率が高くないのに習得率が高い例外ですが、ドイツ語は英語に似ていること及び授業を英語でしたりと学校教育が厳しいことが背景にあると推測されます。

 

《日本と欧米の外国語学習の比較》

アメリカやヨーロッパと日本のテレビ事情はだいぶ異なります。

日本のテレビはほぼ日本語、あって2ヶ国語放送が少し、テレビでの海外作品は吹き替え主体です。日本はほぼ単一民族、単一言語で、内需も十分ありますが、日本も世界を相手に仕事をしている輸出国でもあります。近年強い輸出力で大きくGDPを伸ばしているドイツは英語習得率の貢献も大きいと思われます。

母語、日本語、日本語文化を大事にするのはとても大切ですが、国際化している中では外国語習得も重要です。

英語などの外国語習得は学校だけでは成立しない面があり、テレビが外国語習得に果たす役割があることを日本でももっと認識される必要がありそうですね。

日本人が知らない欧米人の英語習得率が高い理由 まとめ

欧米で、英語ネイティブ以外も英語を話せる人が多い理由について、

・子ども英語テレビ番組の草分けセサミストリートの歴史
・セサミストリートの移民の子ども英語への貢献
・行き過ぎた子どものテレビ視聴に対する批判(2歳未満)
・ヨーロッパでの多言語化政策
・テレビの字幕率と語学習得率の関係

などを紹介しました。子ども英語先進国での「テレビと外国語学習」の深い関係が見えてきましたね。

もちろん、イギリスやアメリカでは、学校でも移民の子の英語の学習支援をしています。具体的にイギリスの学校での移民の子の英語学習支援について下記の記事で紹介しています。テレビによる子ども英語を背景とした外国語学習文化がよくわかり、子ども英語の参考になります。

イギリスの小学校における移民の子ども英語学習支援

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